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P.K.ディックについて



フィリップ・キンドレッド・ディック
1928年12月16日 イリノイ州シカゴ生まれ
1982年3月2日 心臓発作で死亡 享年54歳

まうご犬の本棚で、一番冊数が多いSF作家はディックです。
現在33冊かな。かといってSF作家で一番好きかと聞かれるとそうではないと思うのですが、人間として一番惹かれる作家は誰かと聞かれれば、これはもうディックです。

作家なんだから作品によって評価すべし、だとは、思うのだけど、ディックの場合、作品の出来不出来のムラがものすごくはげしくて、それぞれ別個に感想はあるんだけど、全部(邦訳で手に入るだけだけど)読んでみたら、作品ごとにどうこうってのじゃどうにもならない不思議な思いが湧き上がってきて、それはディックに対する恋愛感情のような感じで、そう感じてしまうともう「あばたもえくぼ」だから、ちゃんと何がどうだ、なんて言いようがないのです。ハマる、というのとも違う、信者になる、というのとも違います。現実にディックがどんな奴だったのか、これもどうでもいいんです。全部の作品に共通する「あがいてる」感じがあまりにも痛々しくて、放っておけない。怒らないから言ってごらん、ちゃんと聞いてあげるから、・・そんなふうに読んでしまうのです。間違ってるでしょう、そういうの。
だから、あまり他人にディックをお薦めできる立場にはないのですが、できれば、書かれた順に沿って読んで欲しいと思います。「偶然世界」から始めて「ティモシー・アーチャーの転生」まで。野心がありそうだったり、悲しそうだったり、辛そうだったり、ばかに陽気だったり、さびしそうだったり、調子にのってたり、生活に苦しそうだったり、彼女とうまくいってたり、絶望してたり、遺言*を書いたり、します。
全部でディックです。

ちょっとだけ読んでみたいというひとに貸すなら
「火星のタイムスリップ」
「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」
「高い城の男」
犬的に愛でてしまうのは
「ザップ・ガン」
「ユービック」
「死の迷路」
「フロリクス8から来た友人」
「暗闇のスキャナー」・・・ああ、キリがない。

サンリオSF文庫と死なばもろともで消えてしまった
数々の傑作の復刊をひたすら願っています。


*:ヴァリス三部作。
  松岡正剛さんの記事を参照してみてください。



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